韓国人シンガーKが日本の伝統を旅する。「修理ができない時代はあってはならない」
第9回 からくり人形 犬山祭保存会事務局長・溝口正成さん、からくり人形師・九代玉屋庄兵衛さん
●Kの視点●
からくり人形づくりで一番苦労するポイントはテクニックだと思っていたら、玉屋さんは顔とおっしゃった。僕にとっては意外だったんですが、お顔を描くというのがとても難しいと。顔がすべてというのには驚きました。
一方で、お話をうかがっていて、音楽と共通することだと感じました。曲づくり、演奏のために音符やコードを勉強し、指が速く動くように練習するというのは、時間をかければ、いずれできる。でも人形の顔というのは、作家の個性で、作家が持って生まれたものが表現される。それを磨くというのは、とても時間がかかる作業。音楽での声や感情、表現方法、フィーリングを磨くためには時間や経験が必要になってくる。そこが人形づくりとリンクしているなと思ったんです。
最後に「からくり人形とは人を楽しませること」という言葉にも共感しました。モノづくりをする人のモチベーションはそれなんですよね。すべての人がその気持ちがあるんだと思います。音楽もまさに目の前にいる人を楽しませるというのが原点だから。CDを作ったり、ライブをしたりと広がっていくけれど、誰かを楽しませたいというところが、すべての始まりなんだと、改めて感じました。